知っておきたい!什器素材の基礎知識「スチール・ステンレス・アルミ」の違いと特徴
目次
さあ、始まりました 【知っておきたい!什器素材の基礎知識】 シリーズ。
毎回、家具や什器の製作に欠かせない素材の基礎知識を解説するこのコーナー。
第5回は、
金属 (スチール・ステンレス・アルミニウム) です。
一口に金属と言っても、種類はさまざまです。
鉄、金、銀、銅などの身近な金属から、レアメタルと呼ばれるリチウム、ニッケル、チタン、コバルトなど、金属元素だけで数えても90種類以上存在します。
今回は金属の中でも、家具や什器に最も多く使用される「スチール」と、私たちの生活で身近な金属「ステンレス」「アルミニウム」の3つそれぞれの特徴と違いについて解説していきます。
スチールとは?
スチール(steel)とは、日本語で鋼(はがね)と言い、鉄を主成分として炭素を0.02~2.14%加えた合金です。
炭素を多く含むほうがより硬い素材となります。
スチール製の家具や什器の製作には、原料である鉄鋼石の塊を圧延(あつえん)というロールで押し伸ばす加工法でつくられた、板材、棒材、鋼管などの材料を使用して、製品へと加工していきます。
スチールの特徴
スチールは曲げやねじりに対する剛性が高く、木材などに比べて寸法の狂いがなく、加工性にも優れた素材です。
一方、ステンレスやアルミに比べて酸化して錆びやすいのが特徴ですが、価格は最も安価です。
また、重さはアルミに比べておよそ3倍(比重:アルミ2.7 鋼7.85)になるので、軽さを求める製品への利用には、デメリットとなることがあります。
スチールの用途
スチールは、鉱物資源が豊富にあり、剛性や加工性が高いうえ、価格も安いことから、建物、インフラ、自動車、鉄道、産業機械、容器など、社会を支える基礎素材として幅広く利用されています。
スチールラック、スチールロッカーなど什器や家具の素材として利用する場合は、サビや傷から守るため、塗装やメッキで表面処理を施したり、化粧シートなどを貼って仕上げます。
スチールの主なメーカー
日本製鉄株式会社 |
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JFEスチール株式会社 |
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株式会社神戸製鋼所 |
ステンレスとは?
ステンレス(stainless steel)とは、日本語直訳で、ステンレス鋼です。
英語でstainless は、stain(汚れ)+ less(ない)の意味となり、文字どおり鉄の酸化によるサビ汚れを防ぐために開発された鋼材です。
鉄を主成分としてクロムやニッケルを加えた合金で、10.5%以上のクロムが混合されると空気中の酸素と結合して表面の酸化を防ぐ保護膜(不動態被膜)を形成します。不動態皮膜は100分の3mmと非常に薄い膜です。
業界用語として、頭文字をとって「ステン」、JIS規格の表記SUSから「サス」と呼ぶこともあります。
ステンレスの特徴
ステンレスは耐食性に優れ、加工時に切断したり、溶接したりして表面が傷ついても、周囲の酸素と結合して不動態皮膜が再生成されます。軽く拭き掃除をするだけで、半永久的にその輝きを失いません。
また耐熱性にも優れ、スチールやアルミに比べ熱による変形がしづらい素材ですが、価格はスチールと比べて高価です。
重さはスチールとほぼ同じで、アルミに比べて約3倍(比重:アルミ2.7 ステン7.93)になります。
ステンレスは、混合される金属の種類や量によって特徴が変わります。
「18-8 ステンレス」と表記があるものは、鉄にクロムが18%、ニッケルが8%含まれるという意味で、JIS規格の記号で「SUS304」と表記される最も流通している材質です。
次に一般的な「SUS430」は、SUS304よりも光沢や耐食性にやや劣りますが、希少金属のニッケルが含まれないため安価です。またSUS430は磁石がくっつくという特徴があります。
ステンレスの用途
ステンレスは錆を防ぐ耐食性をはじめ、加工性、耐熱性の高さと、表面の美しさに優れる特徴を活かし、身近なところでは、キッチンのシンク周り、厨房機器や食器などから、建築材料、医療機械器具、自動車部品、航空機部品など、特に耐食性や美観を求める製品に幅広く利用されています。
ステンレス製品は、表面を研磨し、鏡のようにピカピカに磨く「鏡面仕上げ」、髪の毛のように細長い筋をつける「ヘアライン仕上げ」、ランダムな研磨模様をつける「バイブレーション仕上げ」など、表面処理を施すことで、表面に異なった表情と効果もたせることが出来ます
ステンレスの主なメーカー
日本冶金工業株式会社 |
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日本製鉄株式会社 |
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JFEスチール株式会社 |
アルミニウムとは?
アルミニウムとは、原料のボーキサイトを苛性ソーダ液(水酸化ナトリウム)で溶かし、アルミン酸ソーダ液をつくり、アルミナ分を抽出し、溶融氷晶石の中で電気分解することにより出来上がる金属です。
スチールやステンレスが鉄を主成分とする金属であるのに対して、アルミニウムは原料が鉄ではない非鉄金属に分類されます。
圧延(あつえん)、押出(おしだし)、鍛造(たんぞう)、鋳造(ちゅうぞう)などの加工法で、いろいろな形のアルミニウム製品に成形されます。
アルミニウムの特徴
アルミニウムの最大の特徴は、「軽い」ということです。比重が2.7で、スチール(7.85)、ステンレス(7.93)と比べると約3分の1です。
強度は低そうに感じますが、スチールの強度を100%としたとき、70%程度あるので、比強度(重量あたりの強度)は高い素材と言えます。
しかしながら、軽量を活かした製品が多いので、凹みやすく傷つきやすいです。
融点が660度(鉄が1538度)と低いので、容易に加工や再生ができますが、逆に熱によって変形しやすいという弱点にもなります。
また、アルマイト皮膜(陽極酸化皮膜)と呼ばれる皮膜処理によってできた保護膜により、耐食性、熱伝導率性、絶縁性、放熱性、染料の定着性などが得られます。
アルミニウムの用途
アルミニウムは、身近なところでは、アルミ箔、アルミ鍋、アルミサッシ、LED電球の口金などの小さいものから、建設資材や軽量化を必要とする自動車、航空機、船舶、鉄道車両などの輸送分野で広く使われています。
また、熱伝導性の高さからビールやジュースなど飲料缶にも多く利用されています。
金属の再生リサイクルという観点からも、飲料缶に適した素材です。
アルミニウムの主なメーカー
株式会社UACL |
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日本軽金属株式会社 |
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株式会社大紀アルミニウム工業所 |
まとめ比較_スチール・ステンレス・アルミの違い
ここまで、スチール、ステンレス、アルミニウムの特徴と違いをそれぞれ見てきました。それぞれの特徴を活かし、私たちの生活を支えるインフラや建物から食器などの小物まで、さまざまなモノに利用さていることがわかりました。
終わりに、それぞれどんな特徴だったか簡単にまとめておきます。
スチール・ステンレス・アルミニウムの違い
最後に_原料の産出国ランキング
今回は「スチール」「ステンレス」「アルミニウム」の基礎知識を解説しましたが、いかがだったでしょうか?
最後に豆知識として、原料の鉄鉱石と、ボーキサイトの産出国ランキングを発表して終わりたいと思います。
こちらは2017年の統計数字ですが、鉄鉱石は、中国、オーストラリア、ブラジルの上位3ヵ国で世界全体の産出量の8割近くを占めているようです。
アルミニウムの原料であるボーキサイトを見ると、3位にギニア。これは意外に思った方も多いのではないでしょうか?ちなみにギニアの国土面積は、日本のおよそ3分の2。
ギニアより面積の大きな日本はどうかと言うと…残念ながら鉄鋼石はランク圏外。ボーキサイトに至っては、全く取れないようです。
ほんとうに資源って尊いですね!!
金属も木材も、原材料の価格高騰が続く昨今ですが、弊社におきましても資源を大切に、なるべく低コストで良品質な什器の製作を目指していきたいと思います。
それでは、また次回、知っておきたい!什器素材の基礎知識シリーズ でお会いしましょう!