知っておきたい!什器素材の基礎知識「合板」とは?
さて、始まりました 【知っておきたい!什器素材の基礎知識】 シリーズ。
「家具や什器をオーダーしたい!でも必要以上にハイスペックな物を提案されたり、粗悪品を提供されないか心配だなぁ。」
そんな方に向けて、毎回、家具や什器の製作に欠かせない様々な 素材 についての基礎知識を解説していきたいと思います。
第1回は、 合板(ごうはん) です。
家具や什器に使われる木質基材(台板)の代表格として、
合板、パーティクルボード、MDF があります。
家具や什器の製作には、これら木質基材(台板)の表面にシートや薄い板などを貼って見た目を美しく加工した 化粧板(化粧合板)を使用することが多いです。
家具のカタログで よく見かける “背面化粧仕上げ” ”背面化粧貼り” の表記は、「背面にも化粧板を使用していますよ!」という意味になります。
今回は、木質基材(台板)の中で、合板 の基礎知識 をお送りします。
合板とは?
合板とは、木材を薄くむいた単板(ベニヤ)を乾燥させて奇数枚を積み重ね、接着剤で張り合わせて一枚の板にしたものです。英名ではplywood(プライウッド)と呼ばれます。
断面を見てみると縞模様になっています。これは、木目方向(繊維方向)が交差するように積み重ねているからです。交互に積み重ねることで、歪みや反りを抑え、頑丈な仕上がりとなります。
写真:滝澤ベニヤ株式会社HP
こちらの写真は、合板の製造工程です。
原木の丸太を回転させて、大根の桂むきのように薄くむことで、無駄なく多くの単板(ベニヤ)にすることが出来ます。
合板の規格
合板はJAS規格(日本農林規格)にて、
①種類 ②サイズ ③品質基準などが定められています。
① 種類
コンパネや構造用合板などは聞き覚えがある方も多いと思いますが、どちらもJAS規格で分類される合板です。
JAS規格では、用途別に次の6つに分けられます。
- ・普通合板
- ・コンクリート型枠用合板 ←コンパネ
- ・構造用合板
- ・化粧ばり構造用合板
- ・天然木化粧合板
- ・特殊加工化粧合板
普通合板 は、用途が定まっていない合板全般をいい、家具や什器の製作に多く利用されます。
樹木の違いでシナベニヤ、ラワン合板と呼ばれたりします。
シナとはシナノキ科の広葉樹シナノキのことで、ラワンとは主に東南アジア産の広葉樹のことです。
表面がシナで芯材にラワンを使った合板は、シナベニヤまたはシナ合板と呼ばれ、表面・芯材共にワランを使った合板は、ワラン合板と呼ばれます。ワラン合板は、より安価な普通合板です。
シナ、ワラン以外でも、カバ、セン、ブナ、ナラ、スギ、カラマツ、トドマツ、アカマツ、エゾマツ、ヒバ、ヒノキなど様々な広葉樹や針葉樹を使って合板が作られています。
出典:(財)日本合板検査会
コンクリート型枠用合板 は、耐水性や強度をもたせたコンクリート成型のための型枠用合板で、コンクリートパネルを略してコンパネと呼ばれます。コンパネの表面にイエローの樹脂を塗装したものはパネコートと呼ばれます。基本、屋外の使用を目的とするので、家具や什器の製作にはあまり適した材料ではありません。
構造用合板 は、建築物の構造耐力上で主要な部分に使用する合板です。普通合板など他の合板に比べ、強度など一定の品質基準を持たせています。
▽クリックで写真拡大
最近では構造用合板の無骨な風合いを生かし、内装や什器に利用することで、コストを抑えつつもオシャレな空間づくりをされる店舗を多く見かけるようになりました。
その他の3つ化粧合板は、「化粧板の基礎知識」にて解説していきます。
② サイズ
JAS規格での普通合板の標準寸法は次のとおりです。
出典:合板の日本農林規格(JAS規格)
910mmとか1820mmなど中途半端なサイズですが、これは尺のサイズをミリに直して表示しているからです。
1尺 = 30.303cm = 約 303mm なので、
3×6尺(サブロク)= 910×1,820mm
4×8尺(シハチ) = 1,220×2,430mm
ということになります。
サブロクやシハチと呼ばれるサイズは、非常に多く流通しています。
家具や什器の量産の規格も900・1200・1800・2400や、半分の450・600などが多いです。
厚みは、什器の製作では3mm、6mm、9mm、12mm辺りがよく使用されます。
15mm以上になると重量が大きくなるので、普通合板以外を選択することが多くなります。
③品質基準
合板はJAS規格において、接着の程度、含水率、板面の品質、芯板の品質、曲げ性能、側面及び木口面の仕上げ、寸法の許容差などが規定されています。 さらにホルムアルデヒドの放出量の違いで等級が高い順に、F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆ と規定されています。
安全性の観点から、室内で使う家具や什器であれば、F☆☆☆☆(フォースター)の合板の使用が今や常識となっています。
このように合板にはJAS規格の認証印が押されています。
さらに規格について詳しく知りたい方は以下をご参照ください。
合板の特徴
合板は、一枚板の持つ歪み・反り・節・穴など欠点をクリアした材料です。
加工性にも優れ、曲げ加工を施したデザイン性の高い家具などにも用いられています。
また、天然一枚板に比べて価格が安いので、大量生産の家具などに多く使用されています。
加工のしやすさ、価格の安さなどの利点がある反面、合板に使用される接着剤の化学物質が発散する有害なガス(ホルムアルデヒド)がシックハウス症候群の原因物質の1つとして大きな問題となり、2003年に建築基準法で規制されるようになりました。その後、基準を満たした合板の家庭での使用は安全性が担保されました。
しかし加工現場においては、合板をカットした時に出る粉塵には接着剤が含まれるので、なるべく吸い込まないように注意を払いたいところです。
合板の用途
普通合板 |
家具・什器全般、化粧材基材、その他木製品 |
構造用合板 |
建物の壁・床・屋根 |
型枠用合板 |
ビル・道路建設などの基礎工事 |
合板の主なメーカー
構造用合板、型枠用合板 |
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構造用合板、塗装型枠用合板 |
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構造用合板、単板積層材、型枠用合板 |
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普通合板、化粧板の台板 |
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普通合板、単板 |
最後に
いかがだったでしょうか?合板の基礎知識。家具や什器の製作にお役立ちいただけたら幸いです。
最後に豆知識をひとつ。
明治40年に浅野吉次郎氏が日本で最初にロータリー式機械での合板製造に成功したとされる日にちなみ、11月3日は「合板の日」です。
偉大なる発明家 浅野吉次郎氏に感謝しつつお別れしたいと思います。
それでは、また次回、パーティクルボードの基礎知識 でお会いしましょう!